不動産購入後の都市計画税。課税される条件は?
マイホームの購入をお考えの方は、不動産所有後に毎年かかる税金である「固定資産税」についてはよく耳にされることと思います。
固定資産税は、土地・家屋・償却資産(土地や家屋以外の「事業の用に供することができる資産」)に対して課税される税金で、これら「固定資産」を所有するすべての人に課される税金です。
この固定資産税と同じく、不動産の所有後に毎年かかる税金として「都市計画税」というものがあります。
ただし、固定資産税と違い、都市計画税は不動産を所有している人すべてが課税対象者になるわけではありません。
では、
どんな場合に都市計画税の納税義務は発生するのか?
毎年いくらくらい支払うものなのか?
ここでは、これらの気になる点について書いていきたいと思います。
都市計画税はどんな税?
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業を行う市町村が、その事業に必要となる費用に充てることを目的として設けられた税金のことです。
使い道を具体的に挙げると、
道路・都市高速鉄道・自動車ターミナルなどの交通施設、電気・ガス・上下水道・ゴミ処理場などの供給処理施設、公園・緑地・広場・墓園などの公共施設など、都市での生活に必要な施設の維持拡充のために使われています。
都市計画税の課税区域は、原則として、都市計画区域内の「市街化区域」になります。(※例外として一部の市街化調整区域が課税対象となることもあります)
つまり、都市計画税は、「市街化区域に所在する土地・建物を所有する人」にのみ課されるもので、これに該当する人は、固定資産税に加え都市計画税の納税義務も発生するのです。
市街化区域とは
都市計画税は「市街化区域内」に土地・家屋を所有している場合に課されます。
では、この市街化区域とはどんな区域のことを指すのでしょうか?
「市街化区域」とは、都市計画法で指定される都市計画区域(※)のひとつで、
・すでに市街地を形成している区域
・おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図ることとなっている区域
を指します。
街を活性化させるために活用する地域で、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用(用途地域)を定め、道路、公園、下水道などの都市施設を整備するとともに、土地利用を規制することによって良好な都市環境の形成が図られています。
※都市計画区域は、都市計画法という法律によって、都道府県知事もしくは国土交通大臣が指定するエリアのことで、「線引き都市計画区域」と「非線引き都市計画区域」に分けられます。
線引き都市計画区域の中に「市街化区域」と「市街化調整区域」があり、これらを分けることを「区域区分(または「線引き」)」といいます。
市街化区域に対し、「市街化調整区域」は、市街化を抑制する区域であり、農地や自然環境の保全が優先されます。
このため、農林漁業用に必要な建物や、都市計画法で許可されている一定の建築物を除いて、原則として建築物の建築や増改築はできません。
また、非線引き都市計画区域とは、区域区分を定めていない都市計画区域のことをいい、都市計画区域内でありながら区域区分の外にあるため、土地利用に関する規制が緩やかなのが特徴です。
用途地域についても、定められている場合もあれば、定められていない場合もあります。
非線引き区域のなかで用途地域が定められていない地域は、「非線引き白地地域」と呼ばれます。
都市計画税の課税対象者は?
前述のとおり、市街化区域に所在する土地・建物を所有する人に課されます。
より正確にまとめると、都市計画税の課税対象者となる条件は、
●市街化区域内に土地・建物を所有していること
●1月1日時点で所有者として固定資産台帳に登録されていること
になります。
自分が住んでいる家だったり、あるいは購入を検討している不動産があり、その場所が市街化区域に該当しているかどうかは、
・自治体に問い合わせる
・不動産会社に確認する
・インターネットの都市計画情報提供サービス等を活用して調べる
などの方法によって簡単に確認できます。
不動産の売買にあたり、対象の不動産が所在する区域について把握することは大切ですので、事前にチェックしておくことをお勧めします。
都市計画税の計算方法は?
都市計画税は以下の計算式で求められます。
課税標準×標準税率(0.3%以下 ※市町村の条例による)
●課税標準…税金を計算する際の基準となるもので、都市計画税における課税標準は基本的に「固定資産税評価額」になります。固定資産税評価額とは国が定めた固定資産評価基準に基づいて市区町村が決定するもので、3年おきに見直しが入ります。
●標準税率…法令により上限は「0.3%」と定められているため、0.3%を超えることはありません。ただし、都市計画税の税率は地方税のため具体的な税率はその市区町村によって異なります。より正確な税率は各自治体に確認をするようにしましょう。
≪計算例≫ ここでは、標準税率0.3%として計算します
1,000万円(固定資産税評価額)×0.3%=都市計画税:3万円
このように、不動産の固定資産税評価額が分かれば、都市計画税の税額はおおよそご自身で計算可能です。
購入希望の不動産の固定資産税評価額を知りたい場合は、その不動産を取り扱っている不動産会社に確認してください。
都市計画税の軽減措置の特例について
都市計画税は土地の課税標準に特例が設けられており、これにより税額が軽減されます。
特例の対象となる「土地」は、
●専用住宅の敷地=住宅用地であること(居住用の住宅であればよく、賃貸住宅でも該当します)
※ただし、敷地面積がその住宅の床面積の10倍を超えるときは10倍の面積までの部分
●併用住宅の場合は1/4以上が居住の用に供されていること
という要件を満たすことが必要です。
特例が適用される場合の都市計画税は、住宅用地の区分に応じて課税標準を以下のとおり3分の1もしくは3分の2にする軽減措置が執られています。
★小規模住宅用地(住宅用地のうち、住宅1戸につき200平米までの部分)
土地の課税標準が3分の1に軽減
★一般住宅用地(住宅用地のうち、小規模住宅用地以外の部分)
土地の課税標準が3分の2に軽減
≪計算例≫
住宅用地の面積が2,000平米で、土地の課税標準(固定資産評価額)が1平米あたり9万円、その上に150平米の貸家が10戸建っているとします。
この場合、
・小規模住宅用地は、150平米×10戸=1,500平米
・一般住宅用地は、2,000平米ー1,500平米=500平米
です。
↓
小規模住宅用地の部分は課税標準の9万円が1/3に、それ以外の一般住宅用地の部分に関しては課税標準が2/3に軽減されます。
よって、この住宅用地の課税標準は、
1,500平米×3万円(9万円の1/3)+500平米×6万円(9万円の2/3)=7,500万円
となります。
↓
標準税率を0.3%とすると、都市計画税は、
7,500万円×0.3%=都市計画税:22万5,000円
と算出できます。
繰り返しになりますが、都市計画税の軽減措置は住宅用地のみの特例となり、建物部分の特例はありません。(自治体によっては個別に建物部分の軽減措置が用意されていることもあります。)
また、この軽減措置を受けるには不動産購入後に特別な申請を行う必要はなく、条件に当てはまっている場合は自治体が手続きを行い、軽減措置が適用された形で納付書が送られてきますのでご安心ください。
都市計画税の納付方法は?
都市計画税は固定資産税と同じく市町村に納税する地方税で、納付書は毎年4月~6月に固定資産税とひとつになって届きます。
納付書は4回の納付期限に分けて4枚送られてきますので、年4回に分けて支払うことも、 1年分を一括で支払うことも可能です。
支払い方法としては、
・自治体の窓口や銀行、郵便局、コンビニでの現金払い
・口座振替
・クレジットカード払い
・決済サービス ペイジー(Pay-easy)
・地方税共通納税システム(eLTAX電子納税)
・スマートフォン決済アプリ(PayPay、LINE Pay、au PAYなど)
などがありますが、自治体によっては対応していない支払い方法もあります。
また、クレジットカード払いはポイントが貯まる一方で決済手数料がかかったり、スマートフォン決済アプリでもポイントが付与されるものとされないものがあります。
事前に確認したうえで、自分に合った支払い方法を選ぶと良いと思います。
まとめ
私共の事務所がある名古屋市の場合、市域の95%近くが市街化区域とされています。
このため名古屋市内でマイホームを持つ場合、ほぼ確実に都市計画税が課せられます。
実際に納税していても、納付書が固定資産税とひとつになっているために都市計画税を単体で認識されていない方も多いかもしれません。
所有しようとする不動産が要件に当てはまれば、都市計画税は固定資産税と同じく毎年納付しなければならないものです。
毎年かかるお金のことですので、納付額や納付時期を事前にきちんとチェックしておくと安心です(*^_^*)