市街化区域ってなに?市街化調整区域との違い
先回の用途地域からの流れで、今回は、市街化区域について説明したいと思います。
不動産の物件概要に、「都市計画:市街化区域」や「都市計画:市街化調整区域」などと書かれているのを見たことはありませんか?
市街化区域も市街化調整区域も、都市計画法という街づくりのルールを定めた法律に則り指定された、「都市計画区域」の内にある区域になります。
しかし、各区域の定義や実際の土地利用の方向性は、それぞれ異なる様相を呈しています。
では早速、「市街化区域」「市街化調整区域」とはどんな区域なのでしょうか。
市街化区域も市街化調整区域も都市計画区域のひとつ
繰り返しになりますが、市街化区域も市街化調整区域も、都市計画法で指定される「都市計画区域」のひとつに区分された区域になります。
まず、この大枠となる「都市計画区域」の、「都市計画」とは何なのでしょうか?
そもそも、都市計画とは何か
「都市計画」は、簡単に言えば「よい街づくり」のための計画です。
都市計画法では、「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」と定義されています。
都市計画の決定主体は都道府県や市町村になりますが、都市計画を決めるにあたっては、まず「都市」の範囲を明確にしなければなりません。
そこで、市街地・郊外・農地・山林・田園地帯など、土地の目的や人の動き、都市の発展を長期的に見通し、地形などからみて「一体の都市」として区分けする必要がある場所を定めます。
この範囲を、「都市計画区域」として指定し、都市の適正な発展のために必要となる規制、誘導、整備を都市計画決定した上で、実施しています。
区域区分
都市計画を定める区域を都市計画区域といいますが、それ以外のエリアは、「都市計画区域外」か「準都市計画区域」になります。
つまり、日本の国土は、「都市計画区域」「都市計画区域外」「準都市計画区域」に分かれていることになります。
そして、都市計画区域内においては、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画区域を次のとおり区分することができるとされています。
■すでに市街地になっている区域/計画的に市街地にしていく区域⇒市街化区域
■市街化を抑制する区域⇒市街化調整区域
このように都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に区分することを、「区域区分(または、線引き)」といいます。
↓図にしてみました
非線引き区域/都市計画区域外/準都市計画区域
★非線引き区域
上図にある「非線引き区域」とは、区域区分を定めていない都市計画区域です。
都市計画区域内でありながら区域区分の外にあるため、将来的には街づくり計画を進めておくことが想定されるけれども、まだ方向性が決まっていないエリアという位置づけになります。
具体的には、人家や商店・田畑などが混在しているような風景で、土地利用に関する規制が緩やかなのが特徴です。
用途地域についても、定められている場合もあれば、定められていない場合もあります。
★都市計画区域外
「都市計画区域外」は、都市計画法が適用されず、市街地や宅地化が進んでいないエリアです。
主に、農村・山間部や森林地域・海岸・湖沼周辺など、都市部から離れていることから自然豊かな場所が多いです。
★準都市計画区域
「準都市計画区域」は、都市計画区域外に定められていて、土地利用の制限等をせずに放置すれば、将来、都市としての整備、開発、保全に支障が生じる恐れがある区域をいいます。
具体的には、高速道路のインターチェンジや観光地の周辺エリアなど、将来的な開発が見込める可能性があるエリアです。
将来的に一体の都市として総合的に整備・開発・保全されることを目的として、都道府県が指定しています。
市街化区域の特徴
前述のとおり「市街化区域」は、都市計画法で指定される都市計画区域の区域区分のひとつで、
・すでに市街地を形成している区域
・おおむね10年以内に、優先的かつ計画的に市街化を図ることとなっている区域
を指しています。
市街化区域内は土地の利用の方法(用途)によって住居系・商業系・工業系と大きく3つに分類し、さらに細かく分類した13種類の用途地域に分かれています。
それぞれの用途地域では建築できる建物の種類が下表のように細かく規制され、規制を設けることによって良好な都市環境の形成が図られることとなります。
用途地域の詳細ページは下表をクリック
日本の国土の面積は約3,780万ヘクタールですが、その内、都市計画区域に指定されている面積は約1,028万ヘクタール。計算すると40%弱です。
さらにその内で、市街化区域に指定されている面積は約145万ヘクタールです。
これは、国土の約3.8%になります。(国土交通省発表/2022年3月31日時点)
ちなみに日本の森林面積は約2,500万ヘクタールで、国土のおよそ66%が森林になるそうです。
国土面積に占める森林面積を「森林率」といいますが、世界の森林率の平均が約30%とのことですので、日本は世界のなかでも自然が多い国であるといえます。
話は戻りますが、都市計画区域は、都市の実際の広がりに合わせて定めるため、ひとつの市町村の行政区域の中に含まれるものから、都道府県や市町村の区分けとは関係なく、いくつかの市町村にまたがるものまで大きさは様々です。
広範囲で計画を立てるため、どうしても都市計画区域に森林や農地などが含まれることがあります。
こうした点からも、区域区分によって市街化区域と市街化調整区域を分ける必要があるのですね。
いずれにしても市街化区域は、「街を活性化させるために活用する地域」として区分されています。
よって、市街化区域では、公共交通機関や道路、電気・ガス・上下水道などの生活インフラが整って(または近い将来に整う)おり、人が暮らしやすいように土地利用が適切に行われているのが特徴です。
市街化調整区域の特徴
次に、「市街化調整区域」について説明します。
こちらも市街化区域と同様、都市計画法に基づき指定される都市計画区域の区域区分のひとつですが、街づくりを推進していくために活用する市街化区域とは違い、
「市街化を、抑制する区域」となります。
市街化調整区域では、農地や緑地などの自然環境の保全が優先されています。
街の活性化を目的とはしていないため、原則として用途地域は定めず、一定の農林水産業施設や公益上必要な施設などの例外を除いて、住居や商業施設などを建築することは原則認められていません。
新築で建物を建てる行為はもちろんですが、中古住宅の建て替えや増築・改築のほか、既存の住居の一部を取り壊して改修するリノベーションにおいても、基本的に自治体に開発の許可をもらう必要があります。
(※自治体によっては、指定された地域であれば市街化調整区域であったとしても開発を条例で認めているところもあります。)
市街化調整区域は、国土の約10%近くを占めています。
こうして厳しい制限を設けて無秩序に市街化することを防止しているため、人家が少なく、田んぼや畑などの農業地や森林などが目立つエリアとなります。
生活インフラについても、整備は人が多く住む地域を優先的に行う傾向にあるため、市街化調整区域内では不十分であることは珍しくありません。
また、建築制限がかけられているため不動産の担保価値が低く、多くの金融機関が市街化調整区域の不動産を審査対象外としているケースが多く、住宅ローンの利用が難しいことも特徴として挙げられます。
まとめ
以上、市街化区域と市街化調整区域の特徴をごく簡単にまとめてみました。
同じ都市計画区域内にあっても、その特徴は対を成しています。
個人的な話になりますが、私(事務員)は生まれた時から今に至るまで愛知県の名古屋市に住んでいます。
名古屋市は横浜市に次いで市街化区域面積が広い市だそうです。
必然、生活において見慣れた光景も住宅街や商店、ビル群がある街並みがメインとなるので、こうした当たり前の環境が国土のたったの3.8%程度の内であったことが意外でした。
日本は広いですね。
その広い日本国内には1000を超える数の都市計画区域があり、その特色も様々です。
今は各自治体が公表している都市計画図がインターネットで簡単に閲覧できますので、自分の住む場所がどんなエリアでどのような目的をもって街づくりがされているか、調べてみるのも面白いのではないかと思います。