なぜ?不動産を売却したのに固定資産税の納付書が届いた!
不動産売買においてよくある疑問のひとつに、「固定資産税の支払いについて」があります。
所有している不動産に対してかかる固定資産税は、所有者が支払うことが基本です。
ですが、不動産を売買した際は、年の途中で所有者が変わります。
この場合の支払いはどうなるのか?
お金に関することですしこの辺りは気になるところで、よく質問をいただきます。
今回は、固定資産税についての簡単な説明と、不動産売買時におけるその清算方法について書てみたいと思います。
そもそも、固定資産税とは?
固定資産税とは、土地・家屋・償却資産(※)に対して課税される税金のことです。
土地・家屋・償却資産、これらを総称して「固定資産」ということから、「固定資産税」といいます。
また、課税要件(課税対象資産や納税義務者など)を確定するための日を「賦課期日」といいますが、固定資産税の賦課期日は原則として、1月1日です。
このため、固定資産の1月1日時点における所有者が固定資産税の納税義務者となり、1年度分の税金を固定資産が所在する市町村(東京23区の場合は東京都)に納税する仕組みです。
納税されたお金は、道路や学校、公園など公共施設の整備のほか、介護や福祉等の行政サービスなど、私たちの日々の生活を支える財源として活用されています。
(※)償却資産…会社や個人で事業をされている方が、その事業のために所有している、土地や家屋以外の有形の固定資産(具体的には、構築物、機械・装置、船舶、航空機、車両・運搬具、工具・器具・備品など)を指す
不動産を売却した場合の固定資産税負担は誰?
この固定資産税というのは、1度払ってしまえば終わりというわけではありません。
年税ですので、固定資産を所有している限り毎年度、納税義務が生じます。
では、例えば所有している固定資産が自宅(土地と家)だったとして、それらを売却した場合はどうでしょうか。
土地と家はそれぞれ別個の固定資産と見做されるため両方に固定資産税が課税されていますが、売却があった年は、所有権が売主から買主に移ることとなります。
つまり、売却対象の不動産は、1年のうち「売主が所有している時期」と「買主が所有している時期」があるということですが、このような時の固定資産税の負担はどうなるのかというと・・・
所有者が変わっても納税義務者は変わらず
固定資産税は前述のとおり賦課期日(1月1日)の時点で納税義務者が確定します。
年度の途中で不動産を売却して所有者が変わったとしても、納税義務者が変更になることはありません。
つまり、1月1日時点で不動産の所有者が売主であったら、すでに不動産の所有権が無くとも、売主が売却初年度1年分の固定資産税の納税義務者となります。
買主に固定資産税の納税義務が発生するのは、名義変更された翌年からになるのです。
売主・買主での日割り清算が慣例
とはいえ、不動産を売却して所有権がない期間を含むにも関わらず、売主がまるまる1年度分の固定資産税を支払うのは不公平とされる向きがあります。
そのため、実務上は売主と買主で負担を分担することが慣例となっています。
この場合多くは、その年の固定資産税に相当する金額を日割り清算し、不動産の引渡し後から年度末までの分を買主が売主に対して支払う方法が採られています。
つまり、引渡し日の前日までの期間は売主負担、引渡し日以降は買主負担とするのです。
これにより、不動産を所有している期間の固定資産税をそれぞれが実質的に負担することになるため、不公平感は解消されることになります。
清算は、売主への残代金支払い時に行います。
不動産売却時における固定資産税の清算の仕方としては、この方法が最も一般的となっています。
法律による定めはない
固定資産税の清算は法律上定められているものではなく、あくまで不動産売買時における慣例でしかありません。
売主買主双方の合意により、場合によっては日割り清算ではなく、買主が全額負担することも、逆に清算自体をしないこともあります。
繰り返しになりますが、買主が全額あるいは引渡し後の日数分を負担することで合意となっても、1月1日時点の所有者が売主であれば、あくまで納税義務者=売主です。
例えば、清算によって買主から固定資産税額の一部を受け取った場合は、清算金という区分で計上されるわけではなく、「売買代金に含まれる」とされます。
取引上の名目としては清算として考えますが、税制上は売買価格に含まれるため、売主は譲渡所得が増えるだけに過ぎません。
反対に清算をしなかった場合は、売買価格が取り決め通りになるということです。
実質は値引きをしていることになりますが、税制上の区分では何も変わらないと考えましょう。
設定する起算日は一般的に2パターン
日割り清算を行う際に重要となるのが、「起算日」です。
起算日とは、固定資産税の日割り清算をする際に必要な、売主と買主の所有期間を決める基準となる日を指します。
この起算日の設定は、明確にこうしなければならないといった定めはありませんが、 一般的には「1月1日」か「4月1日」のどちらかに設定するパターンが多いです。
昔から不動産業界では、
・関東では、1月1日を起算日
・関西では、4月1日を起算日
に設定する傾向があります。
(ちなみに、私共 東海住宅が所在する愛知県名古屋市では、「4月1日」を起算日としています。)
例えば、起算日が1月1日の場合、売主は1月1日から買主への引渡し日の前日までの税額相当額を負担し、買主は引渡し日から12月31日までの税額相当額を負担します。
一方、起算日が4月1日の場合、売主は4月1日から買主への引渡し日の前日までの税額相当額を負担し、買主はその引渡し日から翌年の3月31日までの税額相当額を負担します。
具体的に計算してみます↓
<計算例①>起算日:1月1日
次の条件で固定資産税清算金の負担額の計算をしてみます。
★起算日:2023年1月1日
★引渡し日:2023年6月26日
★固定資産税:10万円
起算日が1月1日なので、2023年6月26日に不動産の引渡しを行ったとすると、
・売主の所有日数は、176日(2023年1月1日~2023年6月25日)
・買主の所有期間は、189日(2023年6月26日~2023年12月31日)
と分けられます。
売主:10万円 ×176日/365日 =4万8,219円
買主:10万円 ×189日/365日= 5万1,781円
この場合、買主は5万1,781円を、残代金支払い日に売主に支払います。
<計算例②>起算日:4月1日
★起算日:2023年4月1日
★引渡し日:2023年6月26日
★固定資産税:10万円
起算日が4月1日なので、2023年6月26日に不動産の引渡しを行ったとすると、
・売主の所有日数は、86日(2023年4月1日~2023年6月25日)
・買主の所有期間は、279日(2023年6月26日~2024年3月31日)
と分けられます。
売主:10万円 ×86日/365日 =2万3,562円
買主:10万円 ×279日/365日= 7万6,438円
この場合、買主は7万6,438円を、残代金支払い日に売主に支払います。
まとめ
固定資産税の課税対象になるのは1月1日時点ですが、実際に納付書が送付されるのは4月~6月頃(自治体による)です。
売買の際に清算を行っていても、取引後の忘れた頃に納付書が元所有者へ届く場合も多く、すでに所有権が無いはずなのに何故自分の元に??となるそうです。
契約書にも明記され説明も受けているはずですが、不動産売買はそう何度も経験する類のことではないため、いざとなると分からなくなるのも当然だと思います。
固定資産税の件に関わらずですが、そんな時は遠慮なく、仲介業者に確認しましょう。
不動産取引においては取引前でも取引後でも、疑問は疑問のままにせず、ささいなことでもきちんと確認して納得することがとても大切だと思います(*^_^*)