登記事項証明書の見方を説明します
前回からの流れで、今回は「登記事項証明書」について取り上げたいと思います。
登記事項証明書は、その不動産に関する様々な情報が記録された公的な書類です。
不動産を売却するとき、住宅ローンを利用するとき、住宅ローン控除の申請を行うとき・・・などなど、各種手続きに必要となる書類のひとつです。
また、購入を検討している不動産に関する過去の用途や権利の移動なども詳しく知ることができます。
知っておくと意外に役立つ場面が出てくることもあると思いますので、今回は登記事項証明書の内容や見方について簡単に説明します(*^_^*)
登記事項証明書について
登記事項証明書は、
・表題部
・権利部(甲区)
・権利部(乙区)
・共同担保目録
という4つの欄に分かれた4部構成になっています。
ただし、全ての不動産の登記事項証明書本が同様の構成になっているわけではありません。
不動産登記は、「表題部 → 権利部(甲区)→ 権利部(乙区)」の順番で登記されていきます。
登記されている内容によっては、表題部のみのものや、表題部と権利部(甲区)のみのものもあります。
次に、各構成部分を具体的に見ていきます。
<表題部>の見方
表題部には、その不動産の「表示に関する登記」を記録している部分で、不動産の現況を示しています。
不動産を特定するための情報が記載されています。
■土地
土地がある場所について、市町村字まで記載されます
・地番
不動産登記するにあたって土地に付与される番号が記載されます
・地目
土地の現状・使用目的などによってその種類を示す分類名(田・畑・宅地・山林・雑種地など)が記載されます
・地積
土地の面積が記載されます
・登記の日付
登記された日付、およびその原因が記載されます
※見本では、原因(理由)は分からないため「不詳」と表記しています
■建物
建物がある場所について、市町村字および番地まで記載されます
・家屋番号
不動産登記するにあたって建物に付与される番号が記載されます
・種類
建物の主たる用途(居宅・事務所・店舗・倉庫・共同住宅など)が記載されます
・構造
建物の構造(「構成材料 + 屋根の種類 + 階層」で表現されます)が記載されます
・床面積
建物の各階ごとの面積(壁や柱の中心(壁芯)から計算した数値)が記載されます
・登記の日付
登記された日付、およびその原因が記載されます
※見本では、建物を「新築」して登記されたことが分かります
・附属建物の表示
物置や車庫など、主たる建物と一体となって使用される建物がある場合、ここに種類・構造・床面積・登記の日付などが記載されます
マンション(共同住宅)
一戸建ての登記事項証明書は建物と土地に分かれていますが、マンション(共同住宅)のは、建物(各専有部分)の情報に、土地の情報もセットで登記されています。
これは、共同住宅という性質上、土地のみを売却する/建物の専有部分のみを売却するということができないためです。
登記事項証明書の内容を確認する必要があるときは、特別な事情がない限り、建物の登記事項証明書を取得するだけで問題ありません。
マンションの登記事項証明書は、
・マンション一棟(建物全体)の表題部
・マンションが建っている土地(敷地)の表題部
・マンションの各住戸(専有部分)の建物に対する表題部
・マンションの各住戸(専有部分)とセットになっている土地についての表題部
に分かれています。
マンション一棟(建物全体)にある全ての部屋(家屋番号)が記載されます
●表題部(一棟の建物の表示)
マンション一棟(建物全体)についての情報が記載されます
※見本では、「特別区南都町一丁目3番地1」にある鉄筋コンクリート造陸屋根2階建の、「ひばりが丘一号館」という名称の建物であることなどが分かります
●表題部(敷地権の目的である土地の表示)
マンションが建っている土地(敷地)の情報が記載されます
見本では、「特別区南都町一丁目3番1」の一筆の土地(宅地/350.76平米)の上に建っていることが分かります
●表題部(専有部分の建物の表示)
マンションの各住戸(専有部分)の情報が記載されます
見本では、1階部分にある150.42平米の居宅であることが分かります
●表題部(敷地権の表示)
マンションの各住戸(専有部分)とセットになっている土地に関する情報が記載されます
見本の場合、所有者は4分の1の割合で敷地の所有権を持っていることが分かります
<権利部(甲区)>の見方
権利部(甲区)には、権利のなかでも「所有権に関する事項」が記録されます。
ここを見れば、その不動産の現在の所有者や過去の所有者が分かります。
登記された順番が記載されます
数字が大きくなるほど新しい登記内容になります
・登記の目的
所有権が登記された目的が記載されます
※見本では、最初に「所有権保存」の登記が行われ、次に「所有権移転」の登記が行われたことが分かります
所有権保存…所有権に関して最初になされる登記のこと
所有権保存登記をすることで、権利部(甲区)の欄が生まれます
・受付年月日・受付番号
所有権に関わる登記が受け付けられた日付と、受付番号が記載されます
・権利者その他の事項
所有者の住所や氏名、登記を行った原因が記載されます
※見本では、現在の所有権者は「特別区南都町一丁目5番5号」の「法務五郎」ということが分かります
また、法務五郎は、平成20年10月26日の「売買」によって、「甲野太郎」から所有権を譲り受けた、ということが分かります
尚、所有権保存登記の場合は、この欄に原因は記載されません
<権利部(乙区)>の見方
権利部(乙区)には、権利のなかでも所有権以外の権利に関する内容が記載されています。
ここを見れば、その不動産に対して誰がどんな権利を持っているのかが分かります。
所有権以外の権利として代表的なものは抵当権ですが、その他に、賃借権や地上権などもこちらに登記されます。
登記された順番が記載されます
甲区と同様に、数字が大きくなるほど新しい登記内容になります
・登記の目的
所有権以外の権利について、どのような登記が行われたかが記載されます
見本では、この土地が担保となる「抵当権」の設定が登記の目的だったことが分かります
抵当権…住宅ローンなどでお金を借りた人(債務者)が返済できなくなった場合(債務不履行)に、債権者(金融機関など)が担保とした土地や建物をもって弁済を受ける権利のこと
・受付年月日・受付番号
所有権以外の権利に関する登記が受け付けられた日付と、受付番号が記載されます
・権利者その他の事項
所有権以外の権利に関する内容や、権利者の氏名などが記載されます
<原因>
登記がされた原因が記載されます
※見本では、平成20年11月4日に金銭消費貸借(お金の貸し借り)をしたため、同日に不動産を担保とする抵当権を設定した、ということが分かります
<債権額>
お金を貸した(借りた)金額が記載されます
※見本では、その額が「4,000万円」であることが分かります
ちなみにですが、この額=現在の残債というわけではありませんのでご注意ください
最初に4,000万円の融資が行われたことが分かりますが、債務者は毎月一定額を返済しているはずなので、現在の残債は返済相当分が減っていることになります
<利息>
お金を貸した(借りた)際に取り決めた利息が記載されます
※見本では、「年2.60%」であることが分かります
<損害金>
お金を貸した(借りた)際に取り決めた損害金(債務者の支払いが滞ったときに生じた損害に対する利息)が記載されます
※見本では、「年14.5%」の利息であることが分かります
<債務者>
お金を借りた人の住所・氏名が記載されます
※見本では、「特別区南都町一丁目5番5号」の「法務五郎」であることが分かります
<抵当権者>
お金を貸した人の住所・氏名が記載されます
※見本では、「特別区北都町三丁目3番3号」の「株式会社南北銀行」で、取扱店は「南都支店」であることが分かります
<共同担保>
抵当権を設定したときに担保として提供された不動産が複数ある場合、その目録の番号が記載されます
<共同担保目録>の見方
共同担保目録は、抵当権を設定したときに担保として提供された不動産が複数ある場合、その目録の番号が記載されます。
抵当権が共同担保になっていなければ、共同担保目録の記載はありません。
・記号及び番号
共同担保目録の記号・番号が記載されます
権利部(乙区)に記載される共同担保目録の記号・番号と符合します
・番号
担保となっている不動産に付与された通し番号が記載されます
・担保の目的である権利の表示
抵当権が設定されている不動産の所在・地番・家屋番号が記載されます
※見本では、「特別区南都町一丁目101番の土地」のほか、「特別区南都町一丁目10番地 家屋番号101番の建物」も担保となっているため、共同担保目録が作成されたことが分かります
通常、住宅ローンを利用して戸建てを購入するときは、土地と建物をまとめて担保に提供し、土地にも建物にも同じ抵当権が設定されます
この場合、土地・建物いずれかの登記事項証明書を見れば、共同担保目録に土地・建物の記載があるため、「土地と建物の両方に抵当権が設定されている」という事実が分かります
・順位番号
抵当権の順位が記載されます
権利部(乙区)に記載される順位番号と符合します
まとめ
いかがでしょうか?
以上をざっくりまとめて要約してみると、法務五郎さんの自宅(土地と建物)の登記事項証明書(見本)からは、
・土地や建物の物理的な現況(面積や構造、築年など)
・土地も建物も、現所有者は法務五郎さん
・法務五郎さんは、甲野太郎さんから土地を購入して、その土地に建物を新築した
・法務五郎さんは、建物を新築する際に、金融機関から融資(住宅ローン)を受けた
・融資をした金融機関は南北銀行で、融資額4,000万円を年2.60%の利息で貸し付けている
・南北銀行は融資をする際、法務五郎さんの土地と建物に抵当権を設定している
などが読み取れます。
このように登記事項証明書は、不動産の登記情報を記載し公に明らかにしたもので、我々はここから対象の不動産に係る様々な情報を知ることができます。
つまり不動産の登記は、権利関係などを明確にし誰にでも分かるようにするということで、ひいてはそれが大切な財産である不動産を守ることにつながっているのです。
2024年4月からは相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)が義務化されます。
これを怠ると10万円以下の過料が科される可能性がありますので、ご注意くださいね!