不動産取引でマイナンバーを教える必要ってある?
マイナンバー(個人番号)に別人の情報が登録されたという一連の問題が、今なにかとニュースなどで取り挙げられていますね。
各個人に付番された唯一無二の番号なのですから、その取り扱いには厳重かつ慎重を期さねばと、ニュースを見聞きするたび改めて襟を正す思いです。
というのも私共は、不動産取引させていただいた方にマイナンバーを教えていただくことが、頻繁にあるからです。
マイナンバー制度が始まってから約7年、様々なシーンでマイナンバーを聞かれることはあるかと思いますが、こと不動産取引に至っては全ての人が多くの機会を持つものではありません。
故に、「なぜ必要なのか」のご質問をいただくことは、今でも多々あります。
全ての不動産取引において、マイナンバーが必要になるわけではありません。
ではどんな場合に必要で、どんな理由で教えていただくのか?
ここでは、不動産取引とマイナンバーについて改めて説明させていただけたらと思います。
どんな時に教える必要があるの?
一口で「不動産取引」といっても、シチュエーションは色々です。
売買の場合、自身が不動産の売主になったり・あるいは買主になったり。
賃貸の場合も同様、自身が不動産の貸主になったり・あるいは借主になったり。
しかし、これら全ての不動産取引でマイナンバーが必要になる訳ではありません。
不動産取引でマイナンバーが必要とされ、取引相手からマイナンバーを聞かれるのは、以下の2つのケースに当てはまる場合です。
ケース①~売買~
「個人から法人(または不動産業者の個人)への不動産売却」であり、
「売却代金が100万円を超える」場合
ケース②~賃貸~
「個人から法人(または不動産業者の個人)への不動産賃貸」であり、
「家賃・地代等の受取金額合計が年間15万円を超える」場合
表にしてみました↓
ここでいう取引相手の『法人』とは、「●●株式会社」や「有限会社▲▲」など、法人登録をしている会社のことで、不動産業者だけに限らず、様々な業種の法人が該当します。
そして、取引相手(買主/借主)が『個人』である場合は、たとえ条件が上表の通りだとしても、マイナンバーを教える必要はありません。
一方で、『不動産業者の個人』とは、「個人事業主として不動産業を営む人」を指します。
すなわち、取引相手(買主/借主)が不動産業者であり、且つ上表の条件に該当する金額を受け取る場合は、個人事業・法人事業に関係なくマイナンバーを教える必要が出てくるということになります(※)。
※不動産業者であっても個人事業主ではない人(開業届は出さずに不動産所得を得ている場合)は当てはまりません。
教えたマイナンバーは何に利用されるの?
不動産取引においてマイナンバーを教えていただく理由は、
税務署への提出義務となっている「支払調書」にマイナンバーを記載する必要があるためです。
~支払調書とは?~
法定調書のひとつで、税務署が納税者の正確な支払いを把握するための書類。
「誰に、どんな内容で、年間いくら支払ったか」を税務署に報告する内容で、支払者側が作成し、その所轄税務署へ提出します。
税務署は税の申告を請けた際、これをもってその内容が正しいかどうかを判断する手がかりのひとつとします。
不動産取引に関連する支払調書は、
「不動産等の譲受けの対価の支払い調書」
「不動産等の売買又は貸し付けのあっせん手数料の支払調書」
「不動産の使用料等の支払調書」
です。
ここでは調書の具体的な内容の説明は省略しますが、主として、
物件の種類・所在地・細目・数量・支払年月日・支払金額・支払者(買主/借主)
そして、支払いを受ける者(売主/貸主)の住所・氏名と共に、教えていただいたマイナンバーの記載欄があります。
支払調書を提出しなかった場合、あるいは偽りの記載をした場合は、所得税法第242条の5により「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられることもあるのです。
マイナンバーは絶対に教えなければいけない?
私共は不動産の買取を行う際に、個人の売主さまから不動産を買い取らせていただくことがほとんどです。
つまり、「不動産の買主」となるわけです。
このため、冒頭に述べたようにマイナンバーを教えていただく機会が頻繁に出てくるわけですが、逆に、個人の売主さまの立場で考えれば、不動産の売却機会は初めてという方がやはり多いです。
馴染みが無いことですので、中には「教えるのはちょっと抵抗が・・・。」という方も当然いらっしゃるでしょう。
ご安心いただきたいのは、不動産取引において支払調書を税務署に提出すること自体は義務となりますが、マイナンバーの提供は現時点であくまでも任意であり、義務ではありません。
前表の条件に該当していたとしても、取引相手に教えるのを拒否することは可能です。
教えるのを拒否した場合はどうなるの?
支払調書にマイナンバーの記載がない理由を税務署から問われた際、私共は経緯を説明する必要はありますが、売主さん・貸主さんに何かペナルティがあることはありません。
また、これからどう変わっていくかは分かりませんが、マイナンバーの記載がない支払調書が受理されなかったことも今のところありません。
手続きの円滑化のため、できるならば教えていただきたいというのが本当のところですが、マイナンバーを巡る大小トラブルが世間で後を絶たないのもまた事実。
警戒されるのはもっともですし、慎重になるに越したことはないと思っています。
最後に~注意点~
慎重ついでにもう1点。
マイナンバーは、必ずしも取引相手そのものから提供を求められるとは限りません。
マイナンバーについては、その収集を外部の専門業者に委託することが法令で認められています。
このため、マイナンバーの取扱量が多い大手の法人などが取引相手の場合、別会社から情報提供を求める書類が送られてくることはよくあることです。
ただ、全然関係のない者がこの流れに乗じて何らかの悪事を働くことも、悲しいですがよくあることです。
マイナンバーの提供を求められた先が、ご自身が取引した相手と業務委託している先で間違いがないかを、念のためにしっかりと確認してから情報提供をするよう心掛けると安心です。
※本ページは2023年7月時点での情報です。今後予告なしに変更される場合があります。