権利書とは?基礎知識から失くした場合の対処法まで

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2023年11月05日

権利書とは?基礎知識から失くした場合の対処法まで

不動産の売却に関わらせていただく中でよく遭遇するのが、売主さまの、「権利書、どこにしまったっけ?!」という事態。

その後すぐに見つかったり、見当違いの場所からようやく見つかったり、結局見つからなかったりと、結果は色々です。

権利書はとても大切な書類なのですが、使用頻度は多くの人にとって低いもので、特別普段から所在を意識するものでもありません。

所有してから長い年月が経過して、不動産の売却時など、いざ必要という時に見当たらず大慌てしてしまうケースは、決して少なくないようです。

権利書

「権利書」のおさらい

まず前提として、ドラマや映画などでよく「権利書(権利証)」という台詞が出てくるので耳馴染みがあるワードですが、「権利書」というのは実は通称で、法律上の正確な呼称ではありません。

権利書は正式には、「登記済権利証」といいます。


登記済権利証は、売買などにより新規で土地や建物を取得し、登記を済ませた際に、登記名義人に対して登記所(法務局や、法務局の支局、出張所)から交付されていたものです。


そもそも不動産の登記というのは、土地や建物の所在や面積、種類などの他、所有者の住所氏名や権利関係を公の帳簿(登記簿)に記載することで、対象となる不動産に関する情報を誰もが閲覧できるようになることです。

仮にもし、この不動産登記の制度がなければ、関係のない第三者が所有権を主張するなど、不動産の安全や不動産取引等の円滑性が脅かされる恐れが出てきてしまいます。

こうしたことの無いよう、「その不動産の所有者たる権利」を持っていることを証明する登記手続固有の本人確認手段として、登記済権利証が存在するのです。
 

2005年の不動産登記法改正後は「登記識別情報」

先ほど、登記済権利証が「法務局から交付されていた」と過去形で説明しました。

なぜ過去形かというと、“百年ぶりの大改正”と言われた2005年(平成17年)3月7日施行の不動産登記法改正以降は、登記済権利証の交付が行われていないからです。


では現在はどのように所有者たる権利の証明をしているのかというと、「登記識別情報」による方法で行っています。

手続きの際に原本の提出が必要となる、紙そのものに内容が記載された登記済権利証の交付は廃止され、インターネット時代に適応した、電子データでオンライン手続きが可能な様式へと代わったのです。


登記識別情報は、アラビア数字や英文字の組合せからなる12桁の記号番号(パスワード)で構成されており、不動産ごと、登記名義人ごとに発行されています。


尚、登記識別情報は文字通り情報(データ)なので、オンライン上でダウンロードする流れが原則なのですが、実務では「登記識別情報“通知書”」として紙に印刷された形で受け取ることが一般的となっています。

このようなものです↓
登記識別情報通知
登記識別情報通知書には、不動産の所在地や不動産番号、登記の目的、登記名義人の名前などと共に、登記識別情報が記載されています。

登記識別情報が記載された箇所は発行時には目隠しされており、目隠しシールを捲る、もしくは雑誌の袋とじのようにミシン目に沿って紙を切り剥がすことで初めて確認ができるようになっています。

(シールが上手く剥がれない問題が頻発したため、現在では後者の袋とじ方式で統一されています。)


登記識別情報が知られてそれだけで勝手に名義が変えられるものではありませんが、何かしら悪用される可能性がゼロとは言えませんので、必要になる時まではみだりに開封しない方が賢明かと思います。
 

必要になる時はどんな時?

登記済権利証または登記識別情報は、対象の不動産の所有権など権利関係の情報に変更がある場合、申請の際に使用します。

具体的には、不動産の売買や贈与の際に所有権移転登記の申請をする時や、住宅ローンを組む際や借り換えの際に必要な抵当権設定時などが代表的です。

その他、あまり多くあるケースではありませんが、不動産を寄付をする時にも必要になったりします。

いずれにしても、不動産の所有者ではない第三者が不正に登記を変更したり無断で抵当権を設定したりできないよう、所有者本人の意思を明確にする証拠として必要になります。
 

登記済権利証を登記識別情報に変更は可能?

繰り返しになりますが、2005年の法改正までに土地や建物の所有権を取得して登記を済ませた人には登記済権利証、いわゆる「権利書」が交付されていました。

法改正以降は、代わって「登記識別情報」が発行されています。


だからといって、もし手元にあるのが登記済権利証だとして、いざ必要な時に備えてこれを登記識別情報に変更しておく必要があるのか?というと、そういうわけではありません。

そもそも、変更することができません。

登記識別情報が存在しない時代の不動産について、例えばこれから売買する時など所有権移転の際に必要な場面では、お持ちの登記済権利証が有効に使えますので、変わらず大切に保管しておきましょう。

登記完了証との違い

ところで、紙の権利書(登記済権利証)には、登記が完了したことを証明する機能もありました。

しかし、登記識別情報に様式が変わって以降はこの機能を代替するものとして、別途で「登記完了証」が交付されるようになっています。

登記完了証には、申請受付番号、受付年月日、登記の目的等の申請情報が記載されています。

登記完了証は登記識別情報とは違い、単にその登記申請手続きが完了したことを証明するものです。

たまにこの登記完了証を、イコール権利書と混同する方もありますが、従来の権利書(登記済権利証)と同じ機能を果たすのはあくまでも登記識別情報ですので、ご注意ください。
 

盗まれたらどうなる?

よくある「土地の権利書を持っていかれた!」というドラマなどのシーンでは、「土地そのものを持って行かれた」という感じの緊迫性に満ちていますが、それだけでは勝手に名義変更や売却はできません。

実際に名義変更等を行う場合、権利書の他にも、所有者本人の実印と3ヶ月以内に発行された印鑑証明書が必要となるからです。

(もし、第三者が権利書に加えて実印や印鑑証明書を勝手に入手し、不当に名義変更を行ったとしても、それが違法であることを裁判で証明できれば所有権移転登記を抹消することができます。)


ちなみに、紙の権利書(登記済権利証)であれば物理的にその物が無くなるので気付きやすいですが、登記識別情報は「データ」ですので、他者に見られて覚えられたり、書き写されたりすることが「盗まれた」と同じことになります。

オンライン申請ができることで便利になった反面、盗難の被害に気付きにくいという面もあるといえます。

そこで、例えば登記識別情報を失くすことや盗まれたりすることが心配だという場合、実務上あまり一般的ではありませんが、最初に「登記識別情報通知の通知を希望しない」と選択することも可能としています。


いずれにしても、盗まれた、というそれだけで本人に成り済まして不動産をどうこうできるものではありませんので、まずは慌てずに状況を整理し、必要な手続きを行うことが大切です。


第三者が権利書を悪用するのを防止するための制度として、

・不正登記防止申出(第三者が登記申請を行なった際に法務局から通知してもらえる)
・登記識別情報の失効申出(登記識別情報の効力を失わせる)

があります。

もしもの時がありましたら、落ち着いて管轄の登記所にお問い合わせください。
 

失くした(見つからなかった)場合の対処法

登記済権利証でも登記識別情報でも、どちらも一度紛失すると再発行はできません。

では、紛失してしまった場合、いざ所有権の移転の際にどうするのかというと、代替手段にて本人確認を行います。


本人確認の代替手段として用意されているのが、

・事前通知
・資格者代理人による本人確認情報の提供

です。

※これらの制度は、登記の予定がない段階で行うことはできません。

■事前通知

不動産の登記申請の際に紛失した旨を伝えると、登記所から不動産の名義人宛てに本人限定受取郵便で通知が届きます。

届いた書類には登記の申請の事実と申出書の提出依頼が記載されており、この書類に実印を押して返送することで本人であると判断され、登記申請を受け付ける流れです。

ただし、事前通知制度の場合には、2週間以内に書類の返送を行わなかった場合には登記申請が却下されてしまいます。

登記手続きを行った後、しばらくしてから登記を移せるかどうかが分かるため、譲渡の相手にとって不安が残ってしまう感は否めません。

このため、不動産の売買においてはあまり用いられず、次の方法を採用することがほとんどです。
 

■資格者代理人による本人確認情報の提供

司法書士や弁護士など資格を持つ者が本人と面談をし、その職責に基づいて「本人確認証明情報」という書面を作成し、これを登記申請時に法務局へ提出する方法です。

専門家に手続きを委託するため費用が発生しますが、

・手続きを代行してもらえるため手間が省ける
・専門家の手による安心安全性

という面から、不動産の売買ではこちらが一般的に広く利用される方法です。
 

まとめ

「権利書」のおさらいから始まり、紛失した場合の対処法まで簡単にまとめてみました。

登記識別情報に変わって早20年弱ですが、それまで長く人々に浸透していた紙の権利書の印象は根強く、今でもその名残で、登記識別情報のことを「権利書」と呼ぶ人が非常に多い印象です。

どちらにしても、しまった直後はちゃんと覚えてるんですが、月日が経つとしまった記憶そのものが丸ごとどこかへ行っちゃうって、どんな物でもそうですが本当によくありますよね。

あれって本当に不思議・・・


いざという時に見つからないと焦りも出ますし、余分な手間や費用がかかる場合もあります。

良かったらこの機会に今一度、保管場所を確認しておくことをおすすめします(*^_^*)
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