名古屋も週初めにとうとう梅雨入りしましたね。
昔と違って雨の降り方が変わったというか、まさに豪雨といっていい激しい雨が頻繁に降るようになって、各地で引き起こる雨関連の心配なニュースをよく見聞きするようになりました。
この時期は梅雨前線が停滞し、長期間にわたって雨が降り続くことが引き金となり、河川の氾濫や内水浸水、土砂災害などの自然災害リスクが一段と増す時期でもあります。
ところで、皆さまは自分の住む地域の「ハザードマップ」を確認したことがありますか?
我々宅建業の場合ですと、取り扱う不動産が所在する色んな地域のハザードマップを調査確認する必要がある関係で、ハザードマップはとても身近な存在です。
でもそういった必要性が無かった場合、もしかしたらこれまで一度も存在を意識したことがないという方って、意外と多いのではないのでしょうか。
ハザードマップは、自分が住む地域のリスクを事前に知っておける重要なアイテムです。
今回は、そんなハザードマップについて、どんな種類があってどのような役に立つのかなどを簡単に説明したいと思います。
言葉は聞いたことがあるけれど何のことだか分からない、実際に見たことがない、活用の仕方がよくわからない…という人も多いかもしれません。
ハザードマップは、「自然災害が発生した際に、どこでどのような被害が予想されるか?を可視化した地図」です。
地図上には、被害が及ぶと想定される区域や避難経路、避難場所など防災関係施設の位置が、色分けやマークによって表示されています。
日本は地理的に地震、台風、豪雨、津波など、さまざまな自然災害が発生しやすい国です。
そして、その災害リスクは地域ごとに異なります。
このため多くの自治体では、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的として、ハザードマップの整備や公開を進めてます。
例)名古屋市東区「洪水ハザードマップ」 ↓
近年、自然災害の頻発やその規模の拡大が懸念されています。
特に都市化が進んだ地域では、人口密集地での災害リスクが高くなるため、住民一人一人がリスクを認識し事前に備えることが求められています。
自然災害はいつどこで起きるか分かりませんが、その被害を「予測」することは可能です。
そして、自然災害そのものを防げなくても、被害を減らすことはできます。
すなわち、予測される被害の範囲や程度を把握しておくことで、実際に災害が発生してしまった際にどのように対応すべきかを事前に準備しておくことができるようになるのです。
ハザードマップは、「命を守るための地図」とも言われています。
ただの紙の地図ではなく、災害への備えを具体化するための強力なツール。
災害時の迅速な避難や備えが命を守ることに繋がるため、ハザードマップの存在はとても重要です。
法令等に基づき体系的に自治体での作成取り組みが進められているハザードマップとしては、主に以下8つの種類があります。
災害の種類別にそれぞれの危険区域や避難場所、避難経路などを確認することができます。
●洪水ハザードマップ
洪水とは、大雨などで河川の水位や流量が異常に増大することにより、堤防が決壊し水が溢れ出ることをいいます。
洪水ハザードマップは、河川の氾濫によって浸水が想定される区域や浸水深、避難場所や避難経路などを地図上に示しています。
●内水ハザードマップ
内水とは、雨量が排水路や下水道の処理機能を超えた時に、排水できなかった雨水が下水道などからあふれ出し、道路や住宅地が浸水する現象をいいます。特に、都市部や住宅地などで短時間に局地的な大雨が降ると発生しやすくなります。
内水ハザードマップは、浸水の発生が想定される区域や浸水深、避難場所や避難経路などを地図上に示しています。
●高潮ハザードマップ
高潮とは、台風や発達した低気圧により高波やうねりが発生し、海面の高さが通常よりも高くなる現象のことをいいます。
高潮ハザードマップは、高潮による浸水が想定される区域とその程度、避難場所や避難経路などを地図上に示しています。
●津波ハザードマップ
津波とは、地震や火山活動などで海底の地盤が動き、海水が上下に変動したことにより発生する長波長で高速な波のことです。
津波ハザードマップは、津波による被害が想定される区域とその程度、避難場所や避難経路などを地図上に示しています。
●土砂災害ハザードマップ
豪雨や地震によって地盤が緩むと、土砂災害(崖崩れ、土石流、地すべりなど)の危険性が高くなります。
土砂災害ハザードマップは、被害が及ぶ可能性のある区域や避難場所や避難経路などを地図上に示しており、「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」が指定されています。
●地震ハザードマップ
日本は有数の地震国です。
特に活断層が存在する地域や地盤が脆弱な地域は、強い揺れや地盤沈下、液状化現象などの危険性が高くなります。
地震ハザードマップは、 地震によって想定される被害範囲や液状化の危険度、地震火災発生の危険度、建物の倒壊危険度、難場場所や避難経路などを地図上に示しています。
●ため池ハザードマップ
ため池とは、降水量が少なく流域の大きな河川に恵まれない地域などで、農業用水を確保するために人工的に造成された池のことです。
ため池ハザードマップは、地震や大雨などによりため池が決壊した場合の浸水区域や最大浸水深、到達時間、避難場所や避難経路などを地図上に示しています。
●火山ハザードマップ
火山災害とは、火山活動によって引き起こされる可能性のある災害のことで、主なリスクとしては、噴火、火砕流、火山灰、火山ガス、溶岩流、土石流などがあります。
火山ハザードマップは、火山噴火時に災害リスクが及ぶと想定される範囲、避難場所や避難経路などを地図上に示しています。
前述したように、ハザードマップは災害リスクが多様である日本において、地域ごとの特性に合わせた情報を提供しています。
名古屋市の場合は以下のハザードマップが作成されています。
●洪水ハザードマップ
国、愛知県が指定した想定し得る最大規模の洪水の浸水想定区域図などを基に、浸水範囲・浸水深・浸水継続時間及・避難場所などを掲載
●内水氾濫ハザードマップ
名古屋市が指定した想定し得る最大規模の内水氾濫の浸水想定区域図などを基に、浸水範囲・浸水深・浸水継続時間・避難場所などを掲載
●高潮ハザードマップ
愛知県が指定した想定し得る最大規模の高潮の浸水想定区域図などを基に、浸水範囲・浸水深・浸水継続時間・避難場所などを掲載
●地震ハザードマップ
南海トラフで発生する地震として、「過去の地震を考慮した最大クラス」と「あらゆる可能性を考慮した最大クラス」の2つの地震を想定して被害予測調査を行い、このうち「あらゆる可能性を考慮した最大クラス」の結果を基に、震度・液状化・避難場所などを掲載
●津波ハザードマップ
愛知県が指定した津波災害警戒区域などを基に、浸水範囲・基準水位・浸水開始時間・避難場所などを掲載
●ため池ハザードマップ
ため池の水位が平常時の水位(常時満水位)において、地震等の自然災害により、堤体に万が一異常が生じて決壊した場合に想定される浸水範囲・浸水深・浸水到達時間などを掲載
ハザードマップを確認するためには、主に次の方法があります。
★国が公開している「重ねるハザードマップ」で確認
★各市町村が公開している「市町村ハザードマップ」で確認 「重ねるハザードマップ」は、日本各地点の各災害リスク情報、道路防災情報、標高・地形、過去の代表的な災害事例などを一つの地図上に重ねて表示することができるものです。
このため、日本各地点の自然災害リスクや防災情報等をまとめて調べたい時にとても便利です。
国土交通省のウェブサイト「
ハザードマップポータルサイト」内で公開されていて、もちろん無料で利用できます。
市町村が作成するハザードマップは、「重ねるハザードマップ」のように各災害リスクをまとめて重ねて閲覧できるわけではなく、各種災害ごとに作成されており、それぞれを確認するものです。
他の市ことは分かりませんが、私が住む名古屋市の場合、2年ほど前に防災ガイドブックと共にハザードマップが各戸配布されましたので、紙媒体で持っている世帯も多いと思います。
もし失くしてしっまった場合、各市町村役場(役所)の窓口で直接入手できますし、市町村ホームぺージや防災アプリなどから確認ができます。
参考:名古屋市「
なごやハザードマップ」
※上記のハザードマップポータルサイト内の「
わがまちハザードマップ」からも、各市町村作成のハザードマップ公開先ページへリンクしています。
ハザードマップの存在を知ってその示す内容を頭に入れておくことは、いざという時の行動を最適に導くための大きな助けになると思います。
災害リスクが高まるこの時期にこそ、ご自身の住まいはもちろんのこと、親族友人の住まいや通勤通学先、旅行先などではどのような災害リスクを抱えているのか、避難経路や避難場所はどのようになっているのかをチェックしてみることをおすすめします。
また、現住まいだけではなく、これから不動産を購入・賃貸しようという際にも、ハザードマップのチェックは必要不可欠なポイントであると思います。
リスクが全くない土地はありません。
気になる物件の場所がどんな災害リスクを抱えているかをきちんと把握し、その上でどのような対策ができるのかをイメージしてみる。
これは、より安全で安心な生活につながる賢い不動産選びの第一歩だと思います。